キャンディ☆キス

夏休み中の補習は、受けたい教科別にクラスが別れていて。

一樹は数学、私は英語と、それぞれ違う教室に向かって歩いていった。




「亜希~、帰りどうすんの?」



通り過ぎようとした私の後ろから
一樹が声をかける。



「一樹は今日告白してきたあの子と帰った方がいいんじゃないのぉ?
私はお邪魔だから由美と帰る」


「……あっそう」



ふ〜ん…、という顔で教室に入っていく一樹。



何を言ってんだろうなぁ、私は。

ハァ~っ……



無意識に出るため息とモヤモヤ感。

あの子と帰れば?なんて言った私に、何も言い返さなかった一樹にも少しムカつくし。



別に帰ればいいんだけどさ~。





手招きしている由美の隣の席に座って、私は今日の朝一樹の部屋からこっそりいただいてきた三角イチゴをひとつ口に入れた。



(一樹くんのキスってイチゴの甘い味がするんだよ)



たしかに甘いな…これ。



「今から飴食べるか。亜希、補習そろそろ始まるよ?」


「うん、わかってる」



わかってるんだけど

この味のキスを、一樹から受ける女の子がまた一人増えたんだって思ったら……

私には全然関係ないことなんだけど、なんだかちょっとだけ息苦しい感じは誤魔化せなくて。



私はその日の授業の内容を、何ひとつ頭に入れることなんてできなかったのだ。



もう!
バカズキのせいでホント最悪!


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