ひまわりの涙

なぜここまで大げさにする必要があるの？

周りの視線を感じながら車へと足を運んだ。

その間にも周りの人達のヒソヒソ声が聞こえてくる。

『聞いた？神城家ってあの大会社よね』

『こんなアパートにお嬢様？！』

『すげー、てか庶民の生活を見に来てバカにしてたとか？！』

耳を塞ぎたくなる思いでリムジンの前まできた。

車の前に立っていた男性がリムジンのドアを開けてくれる。

「鞠乃お嬢様、お帰りなさいませ」

その男の顔を見ると見覚えがあった。

あっ、お兄さまのボディーガード…

確か…鈴木…さんって言ったか。

「ありがとうございます」

一言お礼を言ってこの場から早くいなくなりたい気持ちで乗り込んだ。

こんなんじゃここに帰ってこれなくなる…

まさかさっきの不安がこんなに早くくるとは思わなかった。

二年間住み慣れたアパートや周りの景色を流れる様に見ていった。

色々あったけど確かにここは私の場所だった。

それを一瞬にして失って…

神城家は私から何もかも奪っていく。

涙が溢れそうになったけど、今ここで泣くわけにはいかない。

必死に堪えた時『大丈夫。鞠乃』そう母親の声が聞こえた気がした。