ひまわりの涙
ー12ー
迎えに来たのは鏡明人だった。


さっさと後部座席に押し込まれた私は鏡と優子さんのやり取りをみていた。


話し声は聞こえないものの、2人の雰囲気からすると知り合いの様に見える。


まあ、2人が知り合いだろうが何だろうが私には関係ない。


そう思い視線をズラすと母親と5歳ぐらいの男の子が手をつないで歩いてくる姿が目に入った。


幼い子供は全信頼を母親に、母親はありったけの愛情を子供に…


「お母様…」


一瞬目頭が熱くなったが泣くわけにはいかず瞬きでこらえた。


「お待たせしました。鞠乃様」


自分の世界に入りすぎて鏡が車に乗ってきたのにきがつかず悲鳴をあげそうになる。


「どうかなされましたか?」


「ご、ごめんなさい。なんでもありません」


間違っても涙が出そうだったことをバレては行けないと思い必死に冷静を装った。


「そうですか。では今から春仁様の元へ向かいます。グランドホテルでお待ちです」


グランドホテル…確かそこも系列のはず…


まあ、ここで鏡に聞いても教えてはくれないだろう。一言返事をし外を見回した。


さっきまでいた優子さんはいなくなっていた。


「彼女なら戻りましたよ。また会いましょうといっていました。では、参りましょう。30分ほどで着くと思います」


そう言うとユックリと走り出した。
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