最後に、恋人。
由紀とは、2年前まで付き合っていた元カノ。
狂った様な電話をかけてきたのは、そんな元カノの友達の小百合。
「・・・・・・由紀とはもうずっと前に別れてるから」
オレは由紀と別れて、別な女性と結婚して娘もいる。
正直、こういう電話は迷惑以外の何者でもない。
「・・・・・由紀の余命、3ヶ月ないって・・・・」
小百合が、切るに切れない話をし出した。
「・・・・・由紀、病気なの・・・??」
「・・・・・乳がんだって」
オレも由紀も今年で33歳。
同じくらいの歳で癌になっている人は、オレの周りにはいない。
『癌』と言われても、衝撃を受けるだけであまりピンとこない。
「・・・・・乳がんって、治らない病気じゃないだろ」
「由紀の場合は手術しても成功率50%だったんだって」
「・・・・・由紀、手術しなかったの?? 半分は助かるんだろ??」
「・・・・・したって5年生存率も低いし、術後の治療も辛いらしいからって・・・・」
小百合が今にも消えそうな声で話す。
本当に死ぬの?? 由紀、死んじゃうの??
「・・・・・・普通、それでも手術するだろ・・・。 なんで由紀・・・・」
「孝之、説得してよ!! 由紀に手術受けさせて!! 由紀が死んじゃう!!」
今度は悲鳴のような声を上げる小百合。
人の生死が関わる頼みごとをするのは卑怯だ。
断れるわけがない。
失敗しようとも、やるだけやらなければいけない。