・*不器用な2人*・(2)

木山淳

放課後。

「いつピアス開けたの」

私の言葉に、前の席に座っていた淳君はゆっくりと振り返った。

「結構前……」

彼はそう言いながら自分の耳をそっと手で覆う。

「痛そー」

私が言うと、淳君は表情を変えないまま「痛かったよ」と答えた。

彼の耳に空いた小さな2つの穴を、私はマジマジと眺めてしまう。
自分の開けるところを少しだけ想像して、あまりの痛さに思わず耳を覆ってしまいそうになった。

「そういうのって、ピアッサーでやるの?
それとも病院?」

恐る恐る訊ねると、淳君は胸ポケットから安全ピンを取り出した。

「これで……一気に……」

彼は開けた時のことを思い出したのか一瞬だけ表情を顰めながら、貫く身振りをしてみせた。

「そういうのって、ばい菌とか入らない?
衛生上とか……」

私がまた恐る恐る訊ねると、淳君はまたポケットから別のものを取り出す。

コンビニでも割と売っている安っぽいライターだった。

「ライターで、最初に炙って殺菌をしておくと、割と。
あと開けた後は消毒とかして……それでも膿んだら病院行った方がいいらしいね」

彼自身は膿まなかったらしく、他人ごとのような口ぶりだった。

「淳君はさ、そういうことって平気なの?」

私の言葉に彼は視線を漂わせる。

そして、するりと制服の袖を捲った。

「自分でやる分には平気だよ。
人にやられたのは……いやだけど」

そう言う彼の腕には人にやられたという痕が幾つも残り、肌色の部分がほとんど残っていない訳で。

「お兄さんが真似しちゃうかもよ」

私が言うと、淳君は「え」と濁った声を上げた。

「薫はもう全然関係ないから。多分俺の真似なんて絶対にしないと思う」

淳君はそこまで言って、軽く目を伏せた。
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