・*不器用な2人*・(2)
外は暗くなり、学校の近くの役所からノイズの混じった鐘の音が聞こえて来る。

少しだけ冷えて来たかと思いながら、私はそっと体育館の外へと出た。

いつからいたのか、冬もののコートを肩に掛けた芳野君が外の壁に靠れて座っていて、私に気付くと肩をすくめて笑った。

「城島、長引きそうなの?」

「うん、7時過ぎたのにまだやってくって」

呆れながら言って、私は芳野君の方へと歩いて行く。

「これ、あいつに渡しておいて」

芳野君が近所にあるコンビニの袋を私へと差し出す。

「菓子パンと、野菜ジュースと、目薬」

私が中を確認する前に芳野君が中身を教えてくれる。

「この前の練習中に部員の指が目に入っちゃったみたいで、すぐに洗いに行かせたんだけど、今日見たらまだ充血してたから」

芳野君はそう言いながら地面から腰を浮かせる。

校門へと歩いて行く彼に「直接渡せばいいのに」と声をかけてみた。

「城島にとって俺って嫌な先輩だから」

芳野君は笑いながらそう言って、校門を抜けて行った。

ターンターンとボールが弾む音と。

風によって騒がしく揺れる桜の枝と。

帰りたいという気持ちを膨らませる役所の鐘。

高校3年生の春を、私はよく分からない気持ちのまま迎えた。
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