続・鉢植右から3番目


 ドアの所に噂の夫が立っていて、こっちを見ていたから。

「あ、ごめんね長電話。もう寝る?」

 ヤツは既にお風呂に入ったらしかった。パジャマかわりにしているTシャツとスウェット姿でドアの所に立ち、ベッドに寝転ぶ私をじっとみている。

 携帯を閉じてベッドを降りようとすると、スタスタと近づいてきたヤツが目の前に黙って立った。

 ・・・邪魔だ。これでは立てないぞ。

「・・・何?」

 長身の彼を座ったままで見上げる。

 完全に乾いてない湿った前髪の間から見下ろす瞳に、何かの色が見えた。

 ・・・・あら。これは、もしかして。もしかする?

 急に激しく活動しだした鼓動を無視して、私は口を開く。

「私もお風呂、入ってくるね?」

 彼がしゃがみ込んで目を細めた。

「後にして」

「――――――――台所の片付けも、まだ・・・」

「明日にして」

「いや、だって、明日はパートが――――――――」

 するりと顔を近づけて、ヤツが唐突にキスをする。言葉は途中のままで放り出されてしまった。


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