ヴァイス君の日常
俺とパール嬢


キョロキョロと辺りを見回し、安全を確認してから足を踏み出す。

周りから見れば挙動不審な俺の動き。

だけど今、そんな事は気にしてられねぇ。


「ヴァイス───っ?」


遠くで俺の名前を叫んでいるのはパール嬢。

そう。俺は、パール嬢から逃げていた。



───1時間前


俺はある場所に足を向けて歩いていた。

誰も居ない廊下を忍び足で進んで行けば、そこにあるのは厨房。

昼飯は食ったのに腹が減って仕方ない俺は、食い物の匂いにつられて此処までやってきた。


「あ~、いい匂い・・・」


この甘い匂いは何だ?

くんくんと匂いを嗅ぎながら厨房の奥へと進んで行けば・・・


テーブルの上に用意されたバカでかいケーキ。


---すげぇ、旨そう・・・


三段になっている、そのケーキは生クリームがたっぷり塗られていて。

一番上段にはラズベリーや木苺等のフルーツがたっぷりと盛られていた。

ケーキに手を伸ばそうとした時だった。


「ねぇ、フローラ様。あれに、もう少し加えたいんですけど」


隣の厨房からパール嬢の声が聞こえてきた。


「え?何をですか?」


それに答える姫さんの声も。

伸ばしていた手を引っ込めて、テーブルの下に隠れる俺。


何だか嫌な予感がしてくる・・・


「匂い粉」


「えっ?匂い粉??」


パール嬢の言葉に驚く姫さん。


「わっ!?ちょっと、待ってください!!」


「・・・・・」

< 23 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop