悪魔的に双子。
「……真昼、好きな子いるんだ」


「それ、今関係ないでしょ」


なぜか、真昼の声が寂しげに路地裏に響く。


真昼はふいにぱっと立ち上がると、にっこり笑ってわたしを見下ろした。


「さ、百合人迎えに行こ。それとも……」


真昼の口が意地悪な弧を描く。


「リンタロ如きに振られるのが怖いですか?おねーさん」


「リ、リンタロ如きとか言うなっ」


わたしは立ち上がると歩き出した真昼の後を追った。


さっきまで古本屋に向かって歩くことすらできなかったのに、わたしは駆け出していた。













「えっ、凛太朗先輩帰っちゃったんですか」


「うん、ゴメンね」


オジサンがのんびりした声を返す。


わたしと真昼が古本屋に戻ってくると、店の前で百合人くんとオジサンが待っていた。


このオジサン、仕事してるんだろうか。


「ま、あいつも多忙なガキだから、許してやって」


オジサンはにこやかに笑うと、心底楽しそうに言った。


「いやー、さっきはいいもん見さしてもらったよ。青春の一ページって感じ。」


清々しいほどあけすけな人である。


わたしたちがあきれた顔をしていると、オジサンはニヤリとして百合人くんに言った。


「特にそこの少年、いい味だしてたよ」


百合人くん、わたしが飛び出した後何かしたんだろうか。


不思議に思って見上げてみるけど、相変わらず無表情だから何も読めない。


真昼は少し不安そうな顔をして百合人くんを見ていた。


「あの、さっきは挨拶もせずに飛び出してほんとゴメンなさい」


わたしが頭を下げると、オジサンは優しい笑顔を浮かべた。


「いいんだよ、さっきも言っただろう、いいもの見せてもらったって。こっちはもうオジサンだから、自分で青春演じる気力はもうないからさ」


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