悪魔的に双子。
「ねぇ、あの水色のワンピース着てる子綺麗じゃない?」

「ほんとだ、すごい美人」

「ねぇ、あれ唯流姫じゃなくて、真昼くんじゃない?」

「え⁈ウソッ」

「プッ、やべぇあいつはまってる」

「ホント、唯流ちゃんそっくりだな~」


真昼の存在に気づいた生徒たちの好き勝手な囁き声が体育館中に溢れる。


わたしは一人肩を震わせて、笑いを懸命に抑えていた。


あれは傑作だ。


着ているのはシンプルな水色のワンピース。


頭には栗色のストレートのかつらをかぶっている。


近くで見たらまた違うのかもしれないけど、遠くから見れば女の子にしか見えない。


というより、『成長期が来た唯流』にしか見えない。


「困ったことになりましたなぁ。王子、かの姫のお顔を覚えてはおられぬのですか?」


王子の従者に扮した美声テノールの男の子が7人の少女を前に困りはてた顔をする。


有志はまさしく棒読みで、従者の言葉に答えた。


「うん……わからない……その…かの姫はなかなかに厚い化粧をしていたようで」


厚化粧のシンデレラか……


今年の演目はことごとく乙女の夢を壊すつもりらしい。


「それでは、7人の少女たちそれぞれと踊ってみてはいかがでしょう。きっとあの夜の気持ちが思い出されるはずです」


「なるほど、さすがは我が従者」


なにがさすがなのかはわかりかねるが、とりあえず7人の少女それぞれと、王子が踊るシーンがはじまった。






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