悪魔的に双子。
「唯流は皆に楽しんでもらいたいです。


だから、唯流は今日、このステージの上で大好きな人に告白をすることにしました。


…………唯流の好きな人、名前は園村有志。


この学校の二年生です。」


体育館がシーンと静まりかえった。


誰もがあっけにとられて、ステージの上のキチガイじみた美少女を凝視する。


唯流は有志が体育館にいることに気づいていた。


まっすぐに、一番うしろの有志を見つめている。


「有志、あのね、もう知ってるとは思うけど、唯流は世界で一番有志が好きだよ。


あの日から、唯流たちが青にひどいことして、有志に怒られた日から。


覚えてる?


有志、


青に何かあったら君たちを殺す


って言ったの。


本気の言葉。


こんなに強い本気の言葉をそれまで知らなかった。


唯流思ったの。


ああ有志はすごく強くて、とても想いの深い人なんだなって。


あの日からね、ずっとずっと好きだよ。」


青にひどいことした日、というのは、多分、唯流と真昼がかくれんぼのどさくさにわたしを物置に閉じ込めた日だろう。


ひどいことをされたのは数知れずだけど、あの件しか思いつかない。


だって、あの日の有志の冷たい目は、直接向けられたわけではないわたしだって忘れられないくらい印象的で、怖いものだったから。


直接に向けられた唯流は、どれほど怖くて、心揺さぶられたんだろう。


唯流が有志に執着する理由がなんとなく分かった気がした。


…………が、今はそれどころではない。



横を見ると案の定、真っ青の顔をした有志がおろおろと視線を彷徨わせていた。


いざという時以外、かなしいくらい気の弱い我が兄なり。


もう片方のとなりに目を向けてみると、今の状況がおかしくて仕方ないらしく、真昼が必死に笑いを堪えている。









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