悪魔的に双子。
「……あのさぁ」


「……はい」


あみこさんが運転する車の後部座席に並んで座るわたしと真昼。


真昼の不機嫌な(不信げとも言う)声に小さく返事をすると、あからさまなため息が返ってきた。


「青、なんか怒ってる?」


「……別に」


「じゃあ、なんでさっきから目ぇ合わそうとしないわけ」


「……そんなことない」


「げんに今そっぽ向いてるじゃん。僕なんか悪いことしたっけ」


「……してない」


いや、したか。


唐突に、わたしになんの許可もなく、キス、した。


でもきっと、こいつはそれが悪いことだなんて一ミリも思ってない。


悪気のない相手を責める気もない。


さっきから目を合わせられないのは、目が合ったら、きっと顔が真っ赤になってしまうだろうって予感があるから。


恥ずかしい……よ。


恥ずかしさで瞳が潤みそうになる。


そんなの絶対真昼に見られたくない。


だって真昼はこんなにいつも通りなのに、わたしだけうろたえているなんて、なんか腹立つし、妙に悲しい。


「……なんだよ……青のばか……」


小学生に戻ったような口調で言ったっきり、真昼も黙ってしまう。


しばらく車のエンジン音しか聴こえなくなったけど、ふいに運転席のあみこさんが真昼に負けず劣らず子供っぽい口調で、


「なに?口喧嘩もう終わり?面白くなりそうだったのに……」


とのたもうた。


………笑いたいけど、笑えません。



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