お嬢様になりました。《番外編》
「来たみたいだ」

「え?」

「車」



カルロが指差す方を見ると、黒塗りの車が一台止まっていた。



「行こう」

「カ、カルロ!?」

「ん?」



手を握られドキッとしてしまった。


私はこんなにあたふたしてるっていうのに、カルロはいつもと変わらない。


隆輝とは全然違う手の感覚。


繋ぎなれない手に違和感を感じながらも、嫌だとは思わなかった。



「宝生院の家までお願い」

「畏まりました」



ドアを開けてくれている運転手さんに頭を下げ、カルロに促されるまま車に乗り込んだ。


車の中でも繋がれた手が離れる事はなかった。


隆輝の顔がチラつきながらも、私も離そうとはしなかった。


チクチク痛む胸を誤魔化す様に、カルロと沢山話をした。


隆輝とだってこんなに沢山話をした事なんてない気がした。



「葵」

「ん? 何?」

「パーティーなんだけど、一緒に行ってくれる?」



そういえば、そんな事言われてたんだっけ……。



「私で良ければ一緒に行くよ」

「ありがとう。 僕は葵がいいんだ」



あんまりにも嬉しそうに笑うから、恥ずかしくてつい視線を逸らしてしまった。


隆輝と一緒にパーティーに参加する時に、こんな風に言ってもらえた事あったかな……。


比べる必要なんてないのに、気付けば比べてる。


その度にどうしようもなく落ち込んでしまう。





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