《改稿中》V系霊媒師「咲邪」†SAKUYA†《改稿中》
 しかし実際財布を預かっている彼には通用しなかった。


「アレって何よ! アーティストのモチベーションを保つのは二の次だって言う訳?」


「いや、背に腹は変えられないっていうことも実際……」


「そんなことだからセールスも伸び悩むのよ。大体ね、かいチョンがいつもそうセコいことばっかり言うから……」


 咲邪は存分にマネージャーのかいチョンを扱き下ろした後で、すっかり消沈して座り込んだ彼を尻目にマキの携帯へ電話を掛けた。


「はぁいマキ。ゼロは元気?」


 そんな貧乏ツアーにペットを連れて行ける訳も無く、ゼロは彼女とお留守番だ。


『咲邪さぁん、元気にしてますよぉ。あっ、ああ〜っ』

「ゼロが何かしでかしたの?」


『いえ、意識が咲邪さんと繋がったらぁ、そっちの状況が見えたんですぅ』


 マキは『千里眼』の異能を持っている。その能力は霊を見いだし、未来を見通せる力が有るのだ。


『またぁ。随分とぉ、厄介な所に泊まってますねぇぇ……』


 マキの話に依るとここには、動物霊を取り仕切る天狗の霊が居るらしい。


「霊穴はどうなの?」


『霊穴はゼロ君じゃないとぉ、解らないんですぅ』


 旅館の各所を歩き回り様子を伝えたが、やはりマキにはそこ迄見通す事は出来なかった。


【マキを家族登録しておいて良かったわ?】


 電話のし過ぎで痛くなってしまった耳をさすりながら、咲邪は思った。



その夜───────



  ブ ブ ブブーゥン ブンブンブブブブゥゥゥン



 霊が現れた。咲邪のベースは霊を感知すると音を出す。霊は何体もの群れを成しているようで、ベースの音もコード(和音)になっている。


「うじゃうじゃ居るんだ」


「でも、何も仕掛けて来ないわね」


「まだぁ、時間が早いからじゃねぇかぁ?」


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