スイート・プロポーズ
そう言いたかったけれど、多分、夏目は聞き入れてくれない気がした。
円花は仕方なく、せめてもの抗議にと、夏目の後ろ髪を引っ張る。
ちょっと強く引っ張りすぎたのか、夏目が眉間に皺を寄せた。
意趣返しに成功した円花は、満足げな笑みを浮かべる。
会社だけれど、一度も会社で感じたことのない雰囲気。
この雰囲気は―――好き。
夏目の与えてくれるキスに、円花は陶然と酔いしれていた。
―――・・・・・・。
ピピピッ。
ピピピッ。
ピピ―――。
「・・・・・・朝、か・・・・・・」
カーテンの隙間から漏れる朝日に、目を細める。
円花は寝ぼけた頭で、ごろんと寝返りを打つ。
(部長は今日から出張か)
ぼーっと天井を見上げ、昨晩のことを思い出す。