スイート・プロポーズ

何度か、切ってもらったこともある。


「美琴? どうかしたの?」


円花が心配そうに声をかけるので、美琴は「なんでもない」と首を振る。


「そういえば、夏目部長の家に行くんでしょ? 泊まり?」

「ち、違うわよ」


動揺する円花を見て、美琴は笑う。

目の前の友人は、上司とつき合っている。

しかも、つい最近のことだ。

ふたりの関係は、とりあえず自宅へ出向く程度には順調のようで、安心している。


「美琴はどうなの? 気になる人とか、いない?」

「いないわね」


即答すれば、円花はやれやれと肩を竦める。

そんな円花を無視して、美琴はグラスの残りを飲み干した。





円花と別れた美琴は、ふと自分の髪に触れてみた。

アイツがキレイだと言った髪。


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