スイート・プロポーズ
離れていく...
幸福上限説、という言葉が、ある日唐突に脳裏によぎった。
幸せがいつまでも続くはずはなく、また、続きすぎた幸せの報いを受けるかのように、不幸が重なってしまう。

そんな話を、どこかで聞いたことがあるような気がして……。


「考えすぎじゃない?」


あまりにも気になりすぎたから、美琴に相談してみた。返ってきた言葉は、まぁ当然ながらそんな感じなわけで。


「けど、うまくいきすぎてると思わない?」


上司との恋愛に足踏みしていたあの頃に比べると、今は順風満帆だ。周囲にもバレていないし、これといった衝突もない。
これ程までに順調な恋愛を、今まで経験したことがないのだ。


「良いことじゃない。もしかして、のろけてる?」

「私は真面目に悩んでるの。何て言うか、そろそろ悪い事が起きるんじゃないか、って」

「例えば?」

「部長とケンカするとか……元カノが現れるとか?」


前者はまぁいいとして、後者は歓迎できない内容だ。自分で言っておいて何だが、円花は気分が沈んでくる。


「ケンカはありえるわね。でも、仲が良いほどケンカするって言うし、いいんじゃない?」


多少のケンカは、恋人の仲をより深めてくれる。
美琴はそう言いたいらしい。


「ま、元カノの登場もありえなくないわよね。部長だもん」


美琴が笑顔で言うから、円花はやっぱり思う。良くないことが起こるのだと。

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