スイート・プロポーズ
とは言え、それを当の本人ではなく、恋人、あるいは伴侶が先に知ってしまった場合、どういった対処が正しいのか。
判断に迷うところだ。


「考えすぎ、かな?」


仕事終わり、行きつけの店で夕食を兼ねた飲み会を美琴と催している。酔ったことはないと公言している美琴は、アルコール度数なんてお構いなし。


「どうかしらね。部長はモテるでしょ」


枝豆を、次から次へと口に放り込む美琴。
それを見つめつつ、円花はビールを一口。仕事終わり、夏場のキンキンに冷えたビールに勝るご褒美はない。


「何が心配なの?」

「だって、今井さんは私より可愛いじゃない」


小柄でふんわりとした女の子。男が守ってあげたくなる、そんなタイプに勝てる自信はない。


「あ〜……この間言ってた、幸福上限説、ってやつが関係してるわけだ」

「そう。もしかするかもしれないでしょ?」

「……どうかなぁ。その今井って子が、部長に告白して成功する可能性は低いと思うけど」


美琴自身は、夏目の性格のすべてを把握しているわけではない。
だが、これまでの経緯を鑑みれば、彼が円花一筋なのはわかる。
つまり、円花の心配は杞憂なのだ。


「…………」

「そんなに心配なら、本人に言えば? 部長は私と付き合ってます、って」

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