スイート・プロポーズ

負けず嫌いで、意地っ張りな円花は、どうしても誰かの前で泣いたりできない。

入社した当初、夏目に自分のダメな部分を指摘され、容赦なく怒鳴られた時は、本当に悔しくて泣きたかった。

けれど、悪いのは自分で、夏目の言っていることは正しい。

悔しくても、泣くべきではないと、涙を堪えていた。


だから、泣く場所はいつだってひとりきりのトイレ。


(あ、飛行機雲)


ふと見上げた空には、真っ直ぐ伸びる白い雲。

青い空に、白い雲は良く映える。


「小宮」

「あ、今行きます」


空から目を離し、自分を待つ夏目の元へと、小走りで駆け寄った。


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