水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 


「由貴、代わったのは俺だ。
 お前は電話してきただけだろ」


すかさず、由貴の首根っこを掴むように
突っ込むのは、早城飛翔。



近代的な建物の広いロビーで
オレたちは、他愛のない会話をしながら
彼女を待ち続けた。




すると、
ふと病院を歩く少年の足が立ち止まる。




「飛翔?」


そいつは立ち止まって、飛翔の名前を紡ぐと
飛翔もまた、そいつを思い出したのか
ゆっくりと近づいていく。



飛翔とソイツは、
何か話を交わした後、
オレたちの方へと近づいてきた。



「初めまして。
 西宮寺冬生(さいぐうじ とうせい)です。

 飛翔とは小学生時代、同じ学校に通ってた
 友人です。

 救急で運ばれた患者さんの、
 関係者の方なんですね。

 どうぞ、奥の部屋にご案内します」


そうやって連れられた控室で
出されたお茶を飲みながら過ごして、
内線の呼び出しの後、
オレたちは、
彼女が眠る病院へと向かった。




部屋には医療関係者が
ベッドを囲んでいる。




「恭也小父さん、宜しいですか?」



ノックをした後、
西宮寺が、
部屋の住人へと声をかけた。




そのまま……
彼女の状態を簡単に教えて貰う。


守秘義務があるから、
詳しいことは彼女が今いる、
施設の関係者にしか話せないとのことだった。



彼女に、目立った外傷があるわけでもなく
CTの状態も良好。


だけど……今も、
彼女の意識は戻らず、
眠り続けている。



っとまぁ、要約すると
そう言う説明だった。



医療スタッフは、一礼すると
順番に彼女の病室を後にしていく。



「冬生、すまなかった。
 院長室で、勉強の続きをみよう」



そう言われた、西宮寺さんは
一礼して、院長先生の後をついて行った。



「じゃ、俺も行くわ。
 氷雨の後半シフトも手伝ってやる。

 由貴、行くぞ」



兄貴と残された病室。
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