水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 


和花ちゃんが布を持って、
私は自分で車椅子の車輪を回す。


布を干せるようにと、すでに今井さんが用意してくれたその場所に
染め上がった布を引っかけると、
私と和花ちゃんは再び、部屋へと戻った。


その後、暫く一緒に過ごして
二人はまたそれぞれの住む場所へと帰って行く。


デスクに向かって、学校の勉強をやりながらも、
携帯を見つめながら、氷雨くんを思う。



液晶に表示させる彼の携帯番号。



お願い……次に逢う日の約束だけが
一言欲しいの。


そう思って、発信ボタンを押そうとした時
着信音が再びなった。


液晶に表示されてる名前は、
一週間ぶりに氷雨くんの名前。



「もしもし、春宮です」


ドキドキしながら通話ボタンを押して答える。



「この間はゴメン。
 少し、時間が出来たから。

 何してた?」

「学校の勉強してました。
 後は、さっきまで学校の課題で草木染してた」


そう言った私に、氷雨くんは「草木染?」っと驚いたような声をあげた。


「うん。草木染。
 青い色だったクサギの実が、媒染に使った木酢酸鉄に入れたら茶色くなったの。

 和花ちゃんは、ミョウバンに入れたんだけど、薄い緑っぽい色になったよ」

「草木染なんてわけわかんねぇよ」

「ふふふっ。
 氷雨くんが、詳しかったら私もそっちの方がびっくりだよ。

 ちゃんと氷雨くんのプレゼントも染めたからね」

「プレゼントって、お前……編み物も言ってなかったか?」

「そうだよ。
 私が渡せるものは何でも、氷雨くんに作ってあげたいから。

 だからね……だからお願いがあるの。
 今度何時だったら会えるか、教えて……。

 それだけで、私……ちゃんと頑張れるから」

勇気を出して告げた言葉。



「クリスマス……。
 イヴの夜には逢いに行くよ。

 だから……それまでは……」


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