水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 


「どうした?」

「今、親父にも連絡しました。

 紅蓮だけで片付けれるものは片付ける。

 だけど高嶋が動き出したら、
 それは俺らの問題じゃないですから。

 親父らも動く名分が出来る」

「優、引き続き、交代しながら
 見張りを続けさせる。

 だがこのままじゃ埒が明かないだろ。

 もっと深く現場に立ち入る。
 オレ自身を囮に使ってな。

 だからお前らも離れてろ。
 巻き込まれるな」


そう言うと、あの日オレが見た
取引現場へと足を向けた。


神経を張りつめながら、
わざとゆっくりと通っていく。



何度も何度も、
相手を挑発するように。


そこにゆっくりと
近づいてくる黒塗りの車。


おろされる窓ガラスから、
向けられる銃口。


放たれる銃声。


その弾を避けるよう瞬時に受け身を取ると、
方向転換をした車はオレをひき殺そうと
猛スピードで突っ込んでくる。


オレとその車の間に、
速度を上げて対向車側からも突っ込んでくる車。


その車は、オレを狙った車に正面衝突。



その車に乗ってたやつは
オレごと、庇うようにその現場を離れていく。




炎上する2つの車。
立ち上る黒煙。





「朔良さん」

「悪い、遅くなった」




そう言った朔良さんは、埃にまみれたスーツを
払うようにして起き上がると、
オレの手を掴んで立ち上がらせた。





「優、氷雨。
お疲れさん。

 後は私の仕事だよ。

 紅蓮は撤収」





朔良さんはそう言うと、オレと優を構成員が
運転する車に乗せて現場に残った。


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