水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 


「氷雨さん、
 最近どうしたんですか?」



俺の後をついてくるのは優。

紅蓮のでオレの側近的役割を担う存在。
んでもって、極道の息子。


極道の息子だから仲良くなったわけじゃなくて、
出逢った後に、それを知ったんだけどな。


バイクで追いかけてくる優を呼び止めて、
ケツに乗せてもらう。


「多久馬総合病院まで乗せてよ」

「いいっすよ」



そう言いながら、
流す優の後ろで風を感じながら
アイツにも
体験させてぇなぁーなんて思ってた。


「氷雨さん。

 最近の氷雨さんも悪かないです。
 女ですか?

 また紹介してくださいよ。
 うちの奴らにも。

 じゃっ」


多久馬の正面玄関に乗りつけると、
オレをおろしてアイツは、
またバイクをすぐに走らせた。



通いなれた
妃彩が入院している階へとエレベーターであがる。

ナースステーションで受付を済ませると、
アイツの病室へと顔を出した。



「妃彩」


ドアをコンコンとノックすると、
嬉しそうに、「氷雨」とアイツの声が聴こえた。



アイツのベッドの上に荷物を放り投げて、
ベッドの上の妃彩を抱き上げると、
車椅子へと移して、
病室から外へと車椅子を後ろから押していく。




「あらっ、妃彩ちゃん。
 お出掛けね。

 もうすぐ夕ご飯だから、
 あまり長居はしないのよ」


担当ナースらしい人にそう言われて、
ちょっと拗ね気味に返事をする妃彩。



「まだ1時間はあるだろ。
 いつも悪いな、遅くなって」


屋上へと車椅子で向かいながら、
エレベーターの中で紡ぎだす。


「氷雨君は学校があるから。
 私は……行ってないから。
 高校って楽しいところ?」


高校って楽しい?


妃彩に言われて、
オレは言葉に詰まる。


楽しいかどうか……。

楽しいと言えるほど、
真面目に通ってるわけじゃない。

かと言って、嫌いだと言い切れるほど
向き合ってるわけでもない。



ただ流されるように、
兄貴と張り合って、
同じ高校に入ったようなものだから。




「悪い……。

 適当に学校行ってるオレには、
 答えられねぇよ。

 その質問。

 けど……ダチは出来たかもな。
 そういう意味じゃ、ダチと過ごす時間は
 楽しいかもな」




そう言い返すオレに、
妃彩は小さく『ダチってお友達?』と
呟く。




お友達か……。

そうだ、お友達だな。
テンポ狂うが……。




「あぁ」


エレベーターが屋上へと到着して、
ゆっくりとドアが開くと、
オレは後ろから押していく。



「いいなぁ。

 お友達……。
 私も本当のダチ作りたいなぁ」



寂しそうに呟いた。


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