水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 

11.再会 -氷雨-



二学期が始まり、
浅間の中は進路の話題で持ちきりになる。

10月上旬の体育祭の練習まで入って来るものの、
オレ自身は、集中出来ない日々が続いていた。



8月。
妃彩と出逢った事故現場の坂の上。

その場所に、
アイツの暮らしていた施設はあったはずなんだ。

ただ何度足を運んでも、
その施設の住人は、その場所に妃彩は生活していないと
多久馬総合病院を退院して以来の、彼女の足取りがつかめないまま
時間だけが流れていた。


学校の授業は、適当に出ながら
バイトやチーム以外のあいた時間は、
気が付いたら、妃彩のことを考えてるオレがいる。


後は気になるのは由貴。



アイツがバイトをしてるのは、
オレや兄貴、親父たちも知ってる。


だからバイトしてるのが問題じゃなくて、
オレが、走ってるところを身内に目撃されたのが問題なわけで。



だけどアイツは、
今だ何のリアクションも起こしてこない。



兄貴やおふくろが何も言ってこないってのは、
アイツが誰にも話してないってことになるとは思うんだが、
口封じは必要だろうな。




そんなことを思いながら、
由貴に絡んできた、影狼の奴らを思い出す。




「氷雨、少しいい?お客さん」



そう言って、有政が声をかけてきたのが
その日の昼休み。

学校内のオレたちチームの溜まり場。




ドアの方に視線を向けたら、
由貴が一人で姿を見せる。



「入れば?」



声をかけると同時に、下の奴らが
オレの元に辿り着きやすいように、
移動して、一種の花道状態が一斉に作られる。


ゆっくりとその中を歩いて、オレのところに来るまで
由貴に、この部屋の奴らの視線は集中していく。



ここに居る奴らは、
皆自分が、居場所のないはぐれもの・異端児だと思ってるやつらが多い。

抑圧された感情の放出先がわからなくて、
不良と世間で言われる行動に出た奴ばかり。

けど腹割って話せば、どうってことのない普通の奴らだ。

ただ……世間より、自己表現が弱いだけ。


そんな奴らの集まり。


だけどそれを素直に世の中は受け入れてくれるほど甘くない。


この世界は、勝者は勝者。
敗者は敗者っと白と黒のどちらかで、彩られている。


そんな奴らにとっては、
今、浅間の生徒会長の時雨と、副会長の飛翔の元で共に第一線を歩き続ける
由貴は、この場所に似つかわしい存在であって、
様々な思惑の困った視線が降り注がれる。


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