水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 


何時まで経っても、
この人はまっすぐにオレだけを見てくれる。


道に迷いかけた時は、
それを導いてくれる。


オレも下に居るアイツラにとって
そんな存在になりたいんだ。


まだまだ目指す背中はデカイな。


朔良さんが集会所から離れた後、
新たな気持ちで、
学校が終わって集まってきた一階にいるチームの奴らの前に立つ。


「氷雨さん、どうしたんすか?
 六代目にしめられましたか?」

「いやっ、逆だよ。逆。
 んじゃ、今日はもう流すか?」


そう言うと、下にいた奴らは楽しそうに
自分の相棒の方へと歩いていく。


その日、久しぶりにチームの奴らと
心行くまで流した後、明け方前に自宅へと戻った。


次に朔良さんに会うのは二日後。
後少し待ってろよ。

その場所から連れ出してやるから。




【二日後】


その朝、起きた直後からオレは
落ち着かないほど、ソワソワしていた。


平常を保っているはずのオレも兄貴や由貴たちにかかったら、
違っているのが感じ取れるのか、朝から何度も何度も、
オレの顔を見ては笑いやがる。


それでも……、今日のオレは兄貴や由貴にされるがまま、
その輪の中で一日をやり過ごす。


放課後のチャイムが鳴ると共に、
校舎を飛び出したオレは朔良さんの姿を校舎前で見つけた。



「朔良さん」

「氷雨、全ては整ったよ。
 さぁ、行こうか」



そう言われて、朔良さんに連れられて
乗り込んだ車は、真っ白なリムジン。


良く見ると、朔良さんの姿も
いつも以上にカッチリとしたスタイル。


そして胸元には、
丸い何かのバッジが付けられていた。

オレたちが乗り込むと、運転手が静かにドアを閉めて、
車は見慣れた景色を通過していく。


通いなれた坂の上にある、
妃彩がいる施設に車がとまると同時に
オレたちが行くことが先方に伝えられていたのか、
何人かが迎えに出てきた。



運転手が開けたドアから颯爽と出た朔良さんは、
そのまま毅然とした足取りで施設の中へと入っていく。


場違いな感覚も感じながら
オレもその後をついて歩いた。


通された部屋で、鞄から取り出した紙を
ゆっくりと相手側に並べる。


その紙に目を通した相手は、
手にしていた鍵をゆっくりと机の前に置いた。



「氷雨、部屋に行っておいで。
 もう少し私は、ここで話があるから」



朔良さんは何時にも増して張りつめたトーンで
告げると、鍵をオレの手の中に放り込む。


朔良さんから受け取った鍵を握って、
妃彩がいる部屋へと走っていく。


受付からかなり奥まった、
閉ざされた空間。


鍵穴に覚束ない手つきで、
なんとか鍵を差し込むと
開錠してドアを開けた。
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