水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」

二人分ずつ用意されたそれを、
テーブルに置くと、

「由貴、少しだけコイツの傍に居てよ。
　すぐに戻るから」


っと氷雨は、女の子私に預けてお店を出ていった。


氷雨が離れた途端に、
途端に寂しそうな視線を向ける妃彩ちゃん。



「大丈夫だよ。

　氷雨はすぐに帰ってくるから、
　少しの間、私とお茶をしていただけませんか？」


用意されたカップに手を伸ばして、
給仕をしながら、何気ない会話を始めていく。



少し恥ずかしそうに頷いた妃彩さんは、
私が注いだ紅茶の入ったカップに、ゆっくりと手を伸ばした。



「美味しいです……」

「それは良かったですね。
　私も頂きますね」


一言、断りを入れてティ－カップを口につける。


「えぇ、美味しい紅茶ですね。
　妃彩さんも、紅茶はお好きなんですか？」

「はいっ。
　今井さんが入れてくださる紅茶がとても美味しくて」


そう答えた彼女の紡いだ「今井」と言う名が気になる。


「あの……今井さんとは？」

「あ、ごめんなさい。
　私のお世話をしてくださる担当のスタッフさんの名前なんです」


そう続けた彼女の言葉に、
氷雨のライバルではないことに安堵している私が存在する。



「そうなんですね。
　妃彩さんにとって、氷雨は優しいですか？」



次に質問した言葉には、
彼女は、可愛らしい頬を赤く染めながら
どれだけ溺愛しているのか、想像をすればするほど面白くなる
ここ暫くの氷雨の行動を教えてくれた。


それと同時に、
学校での態度の理由が明らかになってくる。




氷雨が暫く荒れていたのも、
妃彩さんと連絡が取れなくなって、悶々としていた事実を知る。




彼女より知っている素振りをしながら、
現実問題、私が知ってることなど殆どないんですね。


そんなことを噛みしめるように、
自分に言い聞かせながら、
私は会話が途切れないように
次の話題を考える。


視界に入ったのはラブラドール。

犬の話でもふってみようか。



「妃彩さんは、犬はお好きですか？」


突然の質問に、
彼女は驚いたような素振りを見せる。

「突然すいません。

　すぐそこに、ラブラドールを見かけたのでつい」

「あっ、水晶【みずあき】号のこと見たんですね。
　さっき、私……彼に遊んでもらったんです」


そんな風に言いながら、
彼女は嬉しそうに、店の外にいた犬へと視線を向ける。



そうこうしている間に連絡していた時雨と飛翔が、
店内に入って来る。



「由貴、お前一人で何してんだよ」


そう言いながら、私の隣にいる
車椅子の女の子に視線を向ける。