水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 


氷雨くんは、
見つかっちまったか……っとでも言いたげな
照れくさそうな表情を浮かべた。


「氷雨さん。
 この子ですよね。

 あの病院に居た子」


そうやって私を覗き込んでくる
金髪の髪の男の子。



「おいっ、優。
 妃彩、弄るなよ」

「有政さん。
 聞きました?」



なんてまた弄られてる氷雨くん。



弄られてるの私じゃなくて
さっきからずっと氷雨くんだよ。



なんて思いながら、
ずっと氷雨くんを楽しんでた。



「花火大会、
 特等席あるんですよ。
 
 やっぱり皆で楽しみたいッスからねー。

 氷雨さん、案内しますよ。
 彼女も一緒にどうぞ」


サラリと言われた、
彼女って言う響きが
何故か心地よくて嬉しかった。


紅蓮っと呼ばれる、
氷雨くんの仲間たち。


その輪の中で輝く氷雨くん。



氷雨くんを慕う沢山の人たち。



その人たちは一見、凄く怖そうだったり
取っつきにくそうなのに
凄く凄く優しくて、車椅子だからって
私を偏見の目で見ることもなかった。



皆が花火を楽しむ場所まで、
車椅子が通りやすいように、
次々と声をかけて、
通り道を作ってくれた人たち。


その道を氷雨くんが押してくれる
車椅子で通過して辿り着いた特等席。


シートを敷いて、
ちゃんと席取りしてくれたらしいその場所に
到着すると、車椅子から抱え上げて
シートへと座らせてくれる。


夜空に咲き誇る満開の花が
音楽にのせられて
とても綺麗な夜。



私は……氷雨くんと、
氷雨くんの仲間たちと一緒に
心がポカポカする夜を過ごした。



その日、会場まで迎えに来てくれた
今井さんの車で、サナトリウムまで戻る。


もうお別れなんだね……。




楽しかったのに、
もう終わっちゃうんだね。




今度は何時、来てくれるの?





心の中で思いながら、
声にも出せずに、
泣きそうになる涙を堪えてた私の掌に
ホイっと握らせてくれた小さな小箱。



「お休み、妃彩。

 寂しくなったら、
 連絡しろよ。

 明日からまた学校とバイトが忙しい。
 また休みの日に顔出すよ」


そう言うと氷雨くんは、バイクに跨って
暗闇の中に消えて行った。





部屋に戻って開いた小箱。





そこには、
可愛らしい四葉のクローバーの
ペンダントが輝いていた。
 

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