水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 


「ちーす。

 氷雨、そろそろ顔出すと思ってた。
 親父さんと、食事してきたんだろ」


そう切り出した有政の言葉に、
何処で見てたんだよって、毒づきたくなる。



「今日は先にアイツらと軽く流して、
 見てきた」

「んで、街の状態は?」

「特に異常なしだな」




そうやって会話を交わして、
安全を確認したはずだったのに、
その帰り道、オレは薬物の取引現場らしい場所に
居合わせてしまった。


暗闇に身を潜めて見守る現場。




制服姿の女子高生二人。


そいつらが、車の中から出てきた男に
何かを手渡されて脅迫されてるように映った。



「何してんだよ」




溜まらず飛び出したオレに、
女の子たちを連れ込んだ車は
逃げ出すように走り出す。





その日、自宅までの道程の間
何度か車に襲われた。





顔を覚えられたのか?




そう思ったオレは、
家に被害が及ぶことを懸念して
自宅に帰ることをやめた。






再び戻った紅蓮の住処。





バイクを倉庫の中に隠して、
幹部室に身を隠すように座り込んで、
親父の携帯番号をモニターに映し出す。





いやっ。

手は煩わせられねぇ。
親父も仕事中だ。  





その後、モニターに
映し出したのは家の電話番号。



電話に出た兄貴に、
今日は家に帰らないことを
一方的に伝えて電話を切る。



何度も何度も繰り返しかかってくる
兄貴からの不在着信。




兄貴からの着信の隙に、
繋がった優からの電話。





「もしもし氷雨さん。
 今、何処です?」


「紅蓮の集会所」


「今、親父の家に居るんですけど
 ちょっとヤバイこと起きてるんですよね。

 オレも動けないんで、
 朔良さんが迎えに行ってくれるみたいです。

 ちょっと、こっち来てくださいよ」




優からの電話の後、数分断たずして、
朔良さんからの連絡があった。



声に導かれるように、
集会場から出ていくオレ。



朔良さんの傍には、ガタイのがっしりした、
強面の組員らしき人が3人、
守るようにガードしていた。



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