大嫌い。でも…ほんとは好き。(旧題:ラブ・ストリーミング) 番外編
 実際に社内恋愛をしていた人間が他社に企画案を売り渡したなんていうことも過去にあったのだから仕方ないけれど……。

 183センチの大柄なくせに、とにかくPRECIOUSに関しては神経質で細かくてうるさい。

「それから、カバンのチェックもされてるそうです」
 渋い顔をしてみせる武内くん。

「ええ? カバンまで」
 ここは中学校か高校かと言いたくなる。

「あ、松永先輩、もしかして入れてる?」
 武内くんが悪戯っ子な顔をして訊いてきた。

 私は彼の瞳を見て、ぎくっとする。

「誰にあげようと思ったの?」
「何の話してるの」

 思いっきり動揺してしまったので、言い訳が思いつかない。
 彼はますます意地悪な顔をして覗きこんできた。

「チョコレート」
 と一言、低く甘い声で囁いて。私の心を掻き乱す。
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