ガラスの靴をもう一度
「じゃあ、私は外出するからよろしくね」
「分かりました~」
原田さんは調子良く返事をすると、分厚い資料を自分の方へ引き寄せた。
「麻生さん!待ってください」
オフィスを出て行こうとする麻生さんの後ろ姿に向かって、私は反射的に声をかけていた。
「ちょっと、花ちゃん?」
ア然とする原田さんを置いて、麻生さんの元へ駆け寄る。
「何?花井さん。資料が分かり辛い?」
ゆっくりと振り向いた麻生さんの笑顔は、少し尻込みしそうなくらいだ。
なんて、余裕たっぷりなんだろう。