金曜日の彼女【完】

愛しい人

――――――…

――――…


『…琴葉』

低く澄んだ声―――


懐かしい

愛しい

その声が


私の名前を――――呼ぶ。


「会いたいっ!―――…」

渾身の思いを込めて叫ぶ。

それだけ――ただそれだけだよ、龍太―――…


「…会いたいよ…」

『…うん』

頬を伝う涙の滴。

あの日――…龍太からの別れを告げられた日、私は泣けなかった。

空からは雨の滴がシトシトと零れ落ちていた。

―――それはまるで私の代わりのように泣いた空だった。



「…ック…ヒック…りゅ…っ…龍…太…会いたい…の」

『琴葉…』

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