金曜日の彼女【完】
私は―――…有頂天になっていて、すっかり忘れていた。



とても大事なことを。


伝えなきゃ―――


私の気持ち、ちゃんと会って

伝えなきゃ。



―――――――…

―――――…


カラン♪カラン♪

少し重たささえ感じるドアをゆっくりと押して開ける。


「琴葉!こっち」

入り口の近くに座り、手を軽く上げている。

「…ごめんね、待った?」

「いや、俺もさっき来たとこだし」


夏休みにクラス会を催した喫茶店で航平と待ち合わせをした。


バイトをしていた森本 輝は今日はいないようで、見かけない。

注文した紅茶を飲もうとカップを持った。

「――…で、話って…なに?」

その言葉に思わずその動きが止まる。

飲んでもいないのに、コクッと喉が鳴る。


―――航平は、きっと気づいてる。

今日の話が決していい話じゃないってことを

ここのところ、航平からの電話、メール、そのすべてを無視し続けてきたんだから。


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