金曜日の彼女【完】
喫茶店のドアを開けるとヒンヤリとした風が鼻をつき、それが余計に涙腺を刺激する。

空を見上げ、涙が溢れないように歩き始めた―――。


―――ガシャン――カラン♪――…カラン♪



「――…琴葉!」

――そのまま、振り向かず立ち止まった。


「…俺、俺さ…
もう一度琴葉と付き合えたこと、よかったって思ってる。短い間だったけど、幸せだった。
だから…琴葉にも――できればそう思っていてもらいたい」



「―――…っ…航平に会えてよかった――
そう思ってるよ。もう一度付き合えたこと…後悔してないし…。だって…航平のこと…好き…だったから」


だけど、ごめんね――…。

それ以上に

龍太が――…好きなの。


「…そっか…なら、よかった…」


カラン♪――カラン♪

ドアを再び開ける音が聞こえる。


その音がまだ響いている間に足早に歩を進めた。


立ち止まれば、その場に泣き崩れてしまいそうだったから。

一分でも一秒でも早く―――


本当にありがとう。


そして―――さようなら。


航平―――…。


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