金曜日の彼女【完】
「おはよう…」

「あらっめずらしい。琴葉が自分から起きてくるなんて」

リビングのドアを開けた途端に母親の嫌味を聞かされる。

「今日は雪が降るんじゃないか?」

9歳上の兄貴、和也にバカにされた。

「和兄、マジで天気予報雪だって!!ギャハハハ」

テレビのニュースを見ながら笑い転げているのが、5歳上の兄貴、瑛二。


いつもはとっくにいないはずの兄貴達が、なぜか今日に限って勢揃い。

思わず深い溜め息を洩らしてしまった。



―――…今日はクリスマス・イブ。

龍太との約束の日。



「――…なんで今日は兄貴達が家にいるの?」

お母さんが用意してくれたパンをかじりながら聞いてみる。


「なんだよ、いちゃ悪いのか」

「……別に…和兄、仕事じゃないの?」

「今日は祝日」

「あ…そっか。イブじゃん。――…予定とかはないの?」

「お前こそ、誰かとデート?休みなのにやたら早起きだし」

ニヤニヤしながら聞いてくるのは瑛二兄。

和兄はなぜかギョッとしている。


「龍太君とデートよね?」

「ぶっ!!」

「きったねー、お前飛ばすなよ」

瑛二兄のそんな声も聞こえないほど、びっくりしてしまった。



なんで?

なんでお母さんが知ってるの?

言ってないよね…龍太のこと。

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