金曜日の彼女【完】
「うん…」

「ありがとう…琴葉ちゃん!――…ホントに…今日はごめんね…」

そう言いながら私の腕の傷をそっと擦る 。

そんな沖本君からそっと離れる。

「それより…さっきの沖本君…なんだか…別人みたいだった…。正直言えば…少し怖かった」

一瞬、目を瞬かせた彼は、すぐにフッと笑って

「あれも俺だし、いつも琴葉ちゃんの前で見せている俺も俺自身だよ?」

そう言った。

「え…」

それって…なんだろ…表と裏の顔を持ってるみたいな…。

「龍太だってそうだろ?…みんなの前での龍太と琴葉ちゃんの前での龍太、違うよね?」

―――…あー…確かに…言われてみれば…

私が最初に抱いていたイメージは誰にでも好かれて爽やかで、誰にでも優しい龍太。

でも――…

今、私と付き合ってる龍太は…自分勝手で、冷酷で、優しい言葉ひとつ言わない。


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