金曜日の彼女【完】
駅までの道のりも無言でズンズンと歩く龍太。

しばらく歩いてからいきなり立ち止まった。

「龍太?」

そしてゆっくりと振り向くと

「お前…さっき、慎となに話してたんだ?」

気のせいか、その声色はどこか怒気を含んでいるようにも感じる。

「え…さっき…?」


さっき…

龍太が来る前…。

「――…別に…なにも。図書の仕事の話をちょっとしてただけ」

ホントのこと言ったからって、答えてはくれないよね?

“特別な存在”の意味。

もちろん、聞きたいけど…。

「――…そうか」

そして今度は繋いでいた手を離して先にスタスタと歩き出す


「え!?龍太?」

いつもとどこか違う龍太。

なんだか、いつも以上に不機嫌そうにも見える。


どうしてそんなに沖本君との会話を気にするの?

今まで私が他の男子と話してたからって、気にしたこと、ないじゃない。


駅に着いてもどこか不機嫌なままの龍太にどう接していいか困っていると

「あれっ?琴葉?」


誰かが私を呼ぶ声がした。


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