君の為に出来る事
心配そうな声で、部屋の中を覗き込んできた彼女は、ゆっくりと俺が寝ているベッドに近付いてきた。
「…ん?」
少し擦れた声が漏れ、ゆっくりと目蓋を持ち上げると彼女が俺を見下ろしていた。
「もう、終わったのか?」
「うん…。
ソファーも冷蔵庫も置いてくから、ただ、洗濯機だけは貰うね」
「…うん」
「身体、気をつけてね。
あと、鍵は…」
「…ごめん、もう少し寝てるから、鍵だけ掛けてポストにでも掘り込んどいて」
俺はそれだけ言うと、彼女に背を向けた。
彼女はそんな俺を見て、それから何も言わずドアの向こうに消えていった。
そして、彼女がこの部屋のドアを開け、ドアに鍵を掛けその鍵をポストに掘り込んだ音を聞くまで、俺は息を殺し、涙を耐えていた。