愛よりも深すぎて
振り返ると木崎が立っている。
俺と目が合うと俺に向かって手招きしている。

『どうした?』
と木崎の元へ向かう。

『あのね、先生。
明日から診断書が出て1週間休むことになったのよ。
岡村先生には診断の期間内でもこれるときはこい、といわれたんだけどさ…』
多分来ないよ、という気持ちがあったんだと思う。

『そんなわけで部活も休みます。
卒業式には来るから。
先輩たちに可愛がってもらったしさ。
ちゃんと送りたいから。
んなわけで家では練習する予定だけどほぼぶっつけ本番でごめんね。』

あぁ、だから卒業式の前日まで診断出してもらったんだな。

木崎は本当に一学年上の子に可愛がられてた。
部活帰りも同学年と帰るのではなく一個上の子たちと帰っていた。

恩義を忘れない子だから無理してでもきっと卒業式は来るのだろう。

卒業式が終わって1週間もすれば
終業式だ。

きっとあの子なら大丈夫。

『1週間私に会えなくて寂しいだろうけど(笑)』
『なーにいってんだ。
ゆっくり休め。』

俺は木崎の頭を撫でてやるしかできなかった。
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