愛よりも深すぎて
木崎は俺の隣で泣くだけ泣くと
『色々ありがとね。先生。』
といい、涙を拭いて
『岡村先生に報告してくるわ』
といった。

『大丈夫か?俺も行くか?』
思わずいってしまった。

『大丈夫だよ。
私強いから。』

この日のこの台詞は
虚勢を張っている訳ではなく
本当にこの件を乗り切ったからこそ
彼女が得た強さから出たことばだったと感じた。

『木崎…』

木崎は誰よりも繊細な子だ。
でも強い。

守ってやりたい存在ではあるが
芯の強さは相当だ。

ここでそれでも、ということは
木崎のプライドを傷つけることになる気がした。

『んじゃ行ってこい。』
俺は木崎の背中を押した。

小さい背中ではあるがすっと伸びた背筋で
木崎は廊下を歩いていった。

俺はその背中をただ見つめ
見守ることしかできなかった。
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