愛よりも深すぎて
別々の道
結婚した年の3月。
俺は異動になった。

木崎が入学する1年前に異動してきて7年。
そろそろだとは思っていた。

27歳で異動してきて34歳になっていた。

随分長い時間ここにいたんだな。

離任式には木崎の姿もあった。

離任の挨拶で思わず
『卒業生、ありがとう。
君たちのお陰で…』
卒業生とはいったものの木崎へのメッセージだった。
思わず言葉につまる。
『私は前に進めたことがたくさんありました。』

木崎に話したことで俺は前に進めたのかもしれない。

あの頃誰とも結婚しないと思っていた。
一人の女性を傷つけた、
そして人を一人殺した俺が
幸せになってはいけないと。

木崎へあの事を打ち明けて5年。
俺はきっと前へ進めたのだろう。

離任式の最後に
花道を通る。

花道の最後に木崎が待っていた。
『木崎…』
そういうと俺は不覚にも涙を流した。
そんな俺を木崎は抱き締めた。

『先生、私も明日引っ越しなんだ。』
『お土産待ってるぞ』
『旅立つ教え子にそれかい(笑)』
二人で笑う。
俺と木崎らしい別れ方だろう。

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