愛よりも深すぎて
俺は新聞を見ると思わず『え?』と声をあげた。

『どうしたの?』
と隣にいた佳子が尋ねる。

『木崎の…あ…教え子のお袋さんが亡くなったみたいだ』
『木崎…あ、あの時々連絡来てた子?』

なんとなく木崎の存在は佳子も知っていたのだろう。

『…俺、ちょっと行ってくるわ…』
『…どうしたの?そんなに慌てて』
佳子は俺の様子を怪訝そうな顔で見ている。
『あいつ…木崎が大変だろうから
ちょっと様子見てくる。
木崎、姉さんいるけど確か遠くにいるし
あいつひとりで心配だから。』

『ねぇ?なんでそんなに慌ててるの?
あなた今まで教え子の親御さん亡くなってもそんなになったことないじゃない。』
そういう佳子に
『木崎は俺の!』
と怒鳴りかけてハッとした。
『俺の?』
佳子の眉間にしわがよる。

俺は、今何を言おうとした?

『俺の…大事な教え子なんだよ!』

そういうと俺は家を飛び出した。
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