とっておきの恋
「エリ!」

カオリンがあたしの頭をくしゃくしゃに撫でる。

「何も今すぐ行こうってわけじゃないの。高校を卒業したら、だから」

カオリンの白い歯がまぶしい。

歯並びのよいきれいな歯。

口の中まで整っているんだ、なんてまたぼんやり思う。

「なんだか、カオリンが遠くに感じるよ。ちゃんと夢を持っているし、しかもそんな遠くに行っちゃうなんて…」

それ以上しゃべれなくなった。

言葉がうまく変換できなくて、あたしは黙ってしまった。

「や、やだ。エリったら泣いてるの?」

カオリンは目を丸くして大声をあげる。

まさかあたしが泣くなんて思ってもなかったのだろう。


当然だよ。

当の本人だって、なんで泣いているのかすらよくわかってないんだからさ。


< 131 / 203 >

この作品をシェア

pagetop