とっておきの恋
安部くんはおでこをくっつけて「たいへん、すごい熱だ」って慌てた。

だから初めから言ってたじゃん。

熱があるって。



そしていきなり靴を脱いで、勝手に洗面所へ入った。

初めて入った、あたしのうちなのに、どうしてだかどこにタオルがあるのかもわかっているようで、タオルを濡らして固く絞った。


そしてあたしをおぶって、二階に上がる。

こんなことされたら、普通驚くものだろうけど、あたしはたぶん熱のせいだ。

ちっとも驚かなかった。

それどころか、安部くんの背中が気持ちよくて、このままずっとこうしていたいなんて思っていた。
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