とっておきの恋
「私がエリのこと羨ましいって思っちゃだめ?」

珍しく弱弱しいカオリンの声。

「だめなんて言ってない。ただありえないって思って」

「どうして?」

「だって、ほとんどの女の子はカオリンみたくなりたいって思ってる。もちろんあたしもだよ。でもあたしみたいになりたいって思ってる女の子はまずいない」

これは客観的な意見。

多くの女の子が「そうそう」ってうなずくはず。

「でも…私がエリになりたいって思うのは本当なんだよ。本当に思ってるんだよ…」

あたしが相談したくてカオリンに電話したのに、いつのまにか逆になっていた。

カオリンがあたしに相談してる。

こんなの初めてだよ。

カオリンはいつもしっかりしていて、あたしのこと見ていてくれて、だからあたしは安心して自分らしくいられるの。

でも、それってもしかして、カオリンには負担だった?

カオリンだって頼りたくなるときだってあるはず。

でもあたしの前では弱さを見せられなかったとしたら…。

あたしは親友失格だ。

「カオリン、あたしにだけは弱いとこ見せていいんだよ。しっかりものでなくていいんだよ。本当のカオリンでいて。だってあたしたち親友でしょ」

電話越しに聞いたカオリンが鼻をすする声。

初めてだった。
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