モノクロ
 

「まったく。ほんと、ほっとけないよな」

「っ!」


先輩はくすくすと笑いながら私を見下ろし、ぽんっと私の頭を撫でる。

胸をきゅっと掴まれる感覚に陥ってしまう、優しい顔。

泣きそうになってしまうくらい、私の心の中に嬉しくて幸せな気持ちが湧き上がった。

……でも。

この表情、梢ちゃんを見る時と同じ表情だ……、って気付いた。

……そうか、私って先輩にとっては梢ちゃんと同じような存在なんだ。

だから、こうやって簡単に触れてきてくれる。

そこには恋愛感情なんてもの、本当にこれっぽっちもないんだ──。


「今度、飴ちゃん買ってあげるから、機嫌直せよな」

「……へ?」

「ほら、子どもって飴ちゃん好きだろ?」

「いっ、いりませんっ」

「くくっ」


やっぱり私のこと子供扱いしてる! もう!

先輩が私を子供扱いする態度にイラッとして頬を膨らませてしまうと、「ほら、子どもじゃん。」と先輩に突っ込まれくすくすと笑われてしまった。

また悔しくなって反論したかったけど、それでまた子供扱いされるのが嫌で、黙っておいた。


……でも、たとえ子供扱いだとしても、こうやって先輩と一緒にいて笑い合えるなら、それで満足かもしれないと思ってしまう気持ちもある。

だって、こんな風に先輩と言い合うのはすごく楽しいし、こんなに近くで先輩の笑顔を見れるから。

日に日に先輩のことを好きだという気持ちが大きく膨らんでいっているけど、表に出さなければこうやってずっと先輩の傍にいれるんだよね?

きっと、先輩の隣に笑顔で居させてもらえる条件は、私の気持ちを表に出さずに心の中に封印すること。

そんな“簡単なこと”なんだ──。

 
< 116 / 299 >

この作品をシェア

pagetop