モノクロ
 
***


「~っ、や、やば……っ!」


私、佐々木明希(ささきあき)は、食らいつくようにマンガ本を顔に近付けた。

目に映るのは、抱き合う兄妹の姿。

マンガ本を持つ手は力が入りすぎてプルプルと震えている。


「ううわぁぁ……っ、エロい……っ! エロいですっ、城ヶ崎先生! ぎゃーっ、やばいぃぃ~っ!」


私はどたばたと足をばたつかせながら、そのマンガの作者である城ヶ崎先生にツッコミを入れる。

……もちろん、目の前に城ヶ崎先生がいるわけではなく、これは一人言だ。

“禁断”というだけで、何でこんなにドキドキ感が増して感じるんだろう?

普通のカップルがしているようなことなのに、兄妹同士だったり男同士だったりするだけで、こんなにも雰囲気や捉え方が変わる。

人間の脳みそって不思議だ。きっとそれが人を魅了して、萌えを与えるんだろうな。


「はぁ……こういうのって憧れる……。こう、切ない感じがたまらないんだよね」


……こんな風に普通の人なら考えないようなことを真面目に考えてしまう私は、自他共に認めるマンガオタクってやつだ。

オタクってことを隠す人は多いけど、私は別に隠す理由もないし恥ずかしいとも思わないから、「趣味は?」と聞かれれば、「マンガを読んだりコミケに行って同人誌を買い漁ること」なんて普通に答える。

友達には「いい加減、やめたら?」って忠告されるんだけど、それを聞き入れたことはない。

だって、別にバレたからって困ることはないし、それが私なんだから。

 
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