闇
「お前さ、海崎の事、どう思う?」
「どうって……別に。」
長い睫毛が、微かに揺れたのを見て、俺は にやけてしまう。
「気になるんだろ?」
「別に。」
「あいつモテんの、気付いてんだろ?わざわざ俺が、悪い虫 追い払ってやってんだぞ。」
「……どう言う意味だ。」
ああ、漸く こっちを見てくれた。
「……欲しい物は、早く手に入れなきゃいけないって事。」
俺が そう言うと。
椎名は目を見開いた。
(うわっ。)
その姿に、俺は内心で声を上げる。
これは……女子が騒ぐ気持ちも解るわ。
昔から整ってるとは思っていたが、子供から大人に変わるにつれて、その美貌は、可愛いから美しいに変貌を遂げつつある。
俺が女だったら、惚れちまうかもな。
「……だからさ、早く行ってやれよ。体育館裏で、待ってるぜ。」
「……行かない。」
ふいっと そっぽを向いてしまう椎名の腕を、俺は掴んで無理矢理 歩き出す。
「端から見てる こっちの身にも なれよー。両想いなの、バレバレじゃん。」
「おい、ばっ、曽根倉!」
椎名の焦った声を聞いて、俺は満足気に笑った。