溺愛トレード
マリッジブルーなお嬢様。

────クラウンリテーリング社に売り飛ばされて数日が経過した。

 実乃璃は、あれ以来徹平の部屋には現れていないし連絡もないけど、それはそれで心配だったりもする。

 
「おはようございます、加瀬様」


「おはようございます。あのぅ、お客様じゃないし、その加瀬様ってのやめてもらえません?」

「かしこまりました、加瀬様。本日の外気温は摂氏二十一度、湿度は五十パーセントと過ごしやすい一日になりそうです。雨の心配はいりません」


「はあ……」


 全然、かしこまってないじゃん。

 仕方なく瀧澤さんちのロマンスグレーの素敵なおじ様執事の桐谷さんに扉を開かれて白く輝く国産のセダンに乗り込んだ。


 自分で出社するから迎えはいらない、と毎日毎日言ってるのに、こうして毎日毎日執事さんが迎えにやってきては、何かと面倒をみてくださる。


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