溺愛トレード

 実乃璃は、徹平の額にコツンと自分の額をぶつけて「臭いわ」と呟いた。


「まあいいわ、プー子ちゃんこっちよ。一緒に飲もう」


「あっ、ちがうっ実乃璃! 今日は飲みに来たわけじゃないってば!」


「いいじゃないの、かたいこと言わないで。モナコで知り合った方と、出会った記念日してたのよ。二人ともプロのヨットレーサーよ」


 ムキムキの筋肉の塊みたいなイケメン二人の男性の真ん中のスツールに腰をかけた実乃璃は、くるんと椅子を回して「マティーニお願い」と指を鳴らした。


 すぐにお洒落なグラスに注がれたマティーニが三つ用意されて、それを握らされた私と徹平。



「今夜は飲んで踊って、朝まで遊ぶわ。皆もじゃんじゃん飲みましょう」


 周囲は、わっ、と盛り上がる。



 あ、遊ぶわじゃないっての!!


 ムキムキイケメンの上腕筋に指を這わせて「ふふ」と魅惑的に笑う実乃璃の隣に座り、マティーニのグラスを置いた。


「あのね! 実乃璃っ!」



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