【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中

4.由貴のたくらみ-飛翔-



「早城先生、お疲れ様でした。
 先程の方で午前の外来終了です」


看護師の言葉を受けて最後の作業。

コンピューター場のカルテを確認し、
自分のパソコンへデーターを転送する。


「お疲れ」


看護師に一言声をかけて診察室を後にする。


俺が退室したのと同時に隣の診察室の扉も開いて、
次期院長が姿を見せる。


「お疲れ」


外来にしろ当直にしろ、この病院に就職した当初から
コンビを組んでいる鷹宮千尋(たかみや ちひろ)。


「お疲れ様、早城」

「今日は隣の診察室入るのが少し遅れましたよね。
 時間にシビアな早城がどうかしたんですか?」


鷹宮の言葉に俺は今朝の嫌な出来事を思い出す。


「すいませんでした」

「そうですか。

 何か僕でお役に立てることがあれば言ってくださいね。
神威君とお出掛けの際とか」

「それを言うなら鷹宮だろ。

 大海君は?
勇から聞いてますよ。
 芸能界に本格的に入って活躍してるんでしょう?」

「えぇ、僕も好きなことをしていますし、
 こればかりは辞めさせることは出来ませんから。

今はお互い合う時間を大切にしているんですよ。
あっ、いけない。
 早城、僕はこれで失礼します。
 今から休み時間の間、自宅に居るので何かあれば連絡してください」


鷹宮は腕時計を見ると慌てて、
院長室へと続く廊下を急ぎ足で歩いていく。

一人残された俺はゆっくりと院内レストランの方に
歩きながら今朝の出来事を振り返っていた。


今朝の出来事……。


思い出すのも腹立たしい出来事。



「飛翔、お疲れ様」ふいに背後から聞き慣れた声が聞こえる。


伊達眼鏡に白衣を翻した、仕事モードの親友。

「由貴、今終わったのか?」

「うん。そっちは外来終わった後?」

「あぁ」

「何か飛翔、険しい顔してるね。

 何かあった?
 飛翔がそんな顔する時って殆ど原因は朝なんだよね」

「おいおいっ、勝手に決め付けるなって」

「勝手じゃないよ。

 私だけじゃなくて、これは勇とも話してたんだから。
 飛翔、自分は顔に出ないとか思ってない?
 それって大間違いなんだから。

 私や勇にかかったら……」


おいおいっ。


黙って聞いてりゃ、好き放題言いやがって。

私や勇にかかったら……って、
そりゃ……由貴も勇もそれが専門職だろ。


「そうかそうか。
 なら俺が話さなくてもあててみろって」


投げやり気味に答えながら相手の反応を待つ俺。

これくらいしたっていいだろう。

今、話しているのは精神科の氷室由貴(ひむろ ゆき)。


院長である鷹宮雄矢先生に育てられた勇の精神科医としての相棒。

ちなみに俺と由貴はと言えばガキの頃からの同級生。
そして医大も一緒で就職先も同じ。


腐れ縁ってやつだ。
< 14 / 90 >

この作品をシェア

pagetop